米アウトドアブランド「パタゴニア(Patagonia)」が、ドラァグクイーンで環境保護活動家のパティ・ゴニア(Pattie Gonia、本名:ウィン・ワイリー)さんを相手取り、商標権侵害で1ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。
【動画】ドラァグクイーンで環境活動家の「パティ・ゴニア」さん
パティさん側が、アパレル、オンラインマーケティング、講演活動などに使用するために「パティ・ゴニア」の名前を商標出願したことが発端だ。
訴訟が提起されたのは1月だが、パティさん側が5月末になりSNSで沈黙を破り、大きな注目を浴びている。
商標出願をめぐる対立
パタゴニア側は訴状の中で次のように主張している。
「これらの製品やサービスは、パタゴニアが過去53年間にわたり築き上げてきたブランドの製品、およびその啓発活動と真っ向から競合するものである」
訴状によると、2022年にパティさんがステンレスボトルブランド「ハイドロフラスク(Hydro Flask)」とコラボレーションをした際、パタゴニアとパティさんの間で「パティ・ゴニアのブランド名を冠した製品を販売しない、またパタゴニアのロゴを模倣した、あるいは酷似したフォントやデザインを使用しない」という合意が交わされていたという。
しかし、パティさんがこの合意を無視して「パティ・ゴニア」ブランドのグッズ販売を開始した、とパタゴニア側は主張。2025年にパティさん側と再度連絡を図ったが、2022年の合意にパティさん側が従う意思がないことは明らかだったと訴えている。
訴状には「消費者の間では、パティ・ゴニアがパタゴニアと提携関係にあるのではないかという混乱がすでに生じている」とも記されている。
「ブランドを守る責任がある」とパタゴニア
パタゴニアは、1月に公開した声明で、今回の法的措置は「ブランドを守るために必要不可欠なもの」と説明。
「私たちはアートや創造的な表現、あるいは私たちのブランドに対する論評を否定しているわけではありません。私たちはパティさんが今後も長いキャリアを築き、成功を収め、重要な課題において前進を続けることを願っています。しかしそれは、パタゴニアの知的財産や、私たちが製品を販売し環境保護を訴えるためのブランド力を尊重した形で行われるべきです」
パティさんの主張「大企業によるアクティビストの抹殺」
一方で、パティさん側は強く反発している。
パティさんは5月27日、Instagramに自身の主張を訴える動画を投稿。今回の件を「これはブランド間の対立ではなく、大企業が活動家を潰そうとしているだけ」と非難した。
この訴訟がパタゴニアが掲げるミッション「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」を裏切る行為だとして、「パタゴニア、訴訟を取り下げて」と求め、フォロワーたちにも共闘を呼びかけた。
パティさんによると、このドラァグクイーンのキャラクター「パティ・ゴニア」は2018年、ハイキング中にヒールを履いたことから始まった。名前の由来は南米の「パタゴニア地方」から取ったもので、この地名は衣料品ブランドの誕生よりも500年も前から存在していると指摘した。
また、パタゴニアのロゴを模したデザインの使用については「ファンアートでありパロディだ」と主張。2022年の合意についても、パティさんの将来の活動全体に及ぶような「広範な合意」ではなかったとしている。
さらにパティさんは、パタゴニアが、反LGBTQ+の言説がかつてないほど高まっているこのタイミングを狙って、反撃を受けづらいことを見込んで訴訟を起こしたと感じている。
また、6月はLGBTQ+プライド月間であることを受け、「もしパタゴニアが、今年のプライド月間を『クィアの気候変動アクティビストを連邦裁判所に引きずり出すこと』で祝いたいというのなら、私は自分のため、そして私たちのコミュニティのために全力で闘う」と述べた。
この投稿は記事掲載の時点で7万回以上リポストされ、2万件以上のコメントが寄せられている。
パタゴニアが出した条件とは
パティさんのInstagram投稿を受け、パタゴニアは再び声明を発表。
今回の訴訟に関して、金銭的な利益を求めているわけでも、誰かのアイデンティティや、啓発活動、創造的な表現の権利を否定しているわけでもないと主張した。
「価値観を共有する人物と法廷で争う事態は最も避けたかったこと」としつつ、「企業としてビジネスを守らなければいけない」という姿勢を再度強調した。
6月1日には、「さまざまな情報が飛び交っている商標権訴訟について現状をお伝えしたい」とInstagramに投稿。
問題を解決するためにパティさんに求めている以下3つの条件を明かした。
①すべての商標出願を取り下げること
②パタゴニアのロゴの使用を停止すること
③「Pattie Gonia」名義でのアパレルやその他商品の販売・宣伝をやめること
また、これらについて合意できれば、他の問題は解決に向けて話し合うことができるとし、パティさんは「これまで通りパフォーマーや活動家として活動を続けることができる」と述べた。
これに対しパティさんはInstagramですぐに反応。①②の条件は受け入れるものの、③の条件は教育や支援活動資金となる他社とのパートナーシップ事業を不可能にするとし、「絶対NO」と合意を断固拒否した。
ハフポストUS版の記事を翻訳、編集、加筆しました。